| HOME | | CONTACT | | ABOUT US | | LINK | → 書籍のご注文 ← | 書店様へ |

文屋秋栄 Fumiyashuei publishing Inc.


加藤 尚武(哲学者)

推薦のことば
 学問の言葉のすべてに、読者を筆者の想定する結論に導きいれようとする政治性が働いている。たとえばカントの文章は、きわめて政治的で、しかもサロン趣味的なレトリックも多い。なりふり構わずカントの文章にアタックするというよりは、老獪な政治家と話し合うつもりでカントを読むほうが正しい。  
 そういう政治性がきわめて乏しく、ひたすら筆者の想像力が繰り広げるイメージだけで、純粋に思索を展開する文章としては、シェリングの作品以上の文章はない。そこには何の駆け引きもなく、ただひたすら自分の想像上の前提だけを手引きとして、論述を進めていく孤独で自信に満ちた思索者の姿だけが浮かんでくる。読み進めることで、「こういうイメージが前提となっていたのだ」という謎解きに出会うことが、シェリング読書の醍醐味ではないかと思う。